エレベーターに閉じ込められる恐怖!なぜビル管理会社は事前に防げないのか?

こんにちは!

家の声に耳を傾けるリフォームマイスターの大塚健太郎です。

 

 突然ですが、ちょっとこんなトラブルを想像してみてください。

 

観測以来記録的な猛暑が続く夏のある日、クライアントと午前のオンラインミーティングを終えたあなたはリクライニング機能のあるオフィスチェアで「うーん」と伸びをしてから少し早めのランチに向かいます
「昨日混んでいて入れなかったあの蕎麦屋に行こう」


空調の利いたオフィスの玄関戸を開けると、むっとした熱い空気がたちまち体にまとわりつきます。開放廊下タイプのマンションでも今日のような無風ではエレベーターを待つわずかな時間で背中がじとっとしてくるのを感じます。やってきたエレベーターに飛び乗ると、はやる気持ちが慌ただしく「閉」ボタンを連打させ「ふーっ」っとあなたは一息つきます。8、7、6・・・減っていく数字を目で追っているとき頭の上でキューンという音を感じてその後エレベータ―内がシーンと静まり返ります。

 

「な、何だ?」一瞬暗くなり低電灯が付いた室内であなたは鼓動が早くなっているのを感じながらも操作部廻りを探ります。

「すみませーん、だれかいますかー?エレベーターが止まりましたー!」

非常ボタンを押しマイクに向かって叫びますが、何度か声を出したあとでふと気が付きます

「あ~そうかぁ、管理人さん11時で帰っちゃってるんだ・・・誰かいませんか~!」

あなたの声は誰もいなくなった管理人室でむなしく響き続けます・・・

 

地震でもないのに、急にエレベーターが止まるなんて何でェ~

 

 

 

 

幸いにも、お弁当を買いに行こうとしたマンション住人がエレベーターの異常に気が付いて通報。30分後にあなたは無事に救出されました。

 

こんなドラマのようなトラブルですが、実際に起こる可能性は否定できません。

ちゃんと建物の点検をしてメンテナンスしていないと、こうしたトラブルは発生します。点検をしていない、あるいは点検していても事の重大さに気が付かないで放置してしまう・・・これはもはや人災・管理不行き届き、いったいビル管理会社は何してんだ?という話です。

 

でここからはリアルな話です。

 

JRの駅から徒歩7分の好立地に建つ14階建てのビルオーナーからリフォームの相談を受けたのは3ヶ月前。マンションの住宅リフォームをするに当たってオーナーがこだわっていたのは「前の住人の生活感を消す」という事でした。

水廻りは一新し、間取りも変えますが一部の洋室はそのままという、いわゆるハーフスケルトンのリフォームです。そのまま使う洋室ですら結構な手間暇をかけます。

「生活感を消す」ためにビニールクロスを張り替えるだけではなく、露出配線のケーブルを壁の中に埋め込んだり、白熱灯のダウンライトをLEDに変えたり、エアコンの位置を変えてみたり、けっこう盛沢山の内容は壁や天井に穴を開けたり塞いだりで手間がかかるリフォームでした。

 

そんな厄介な希望をそつなくこなしていると、だんだんとオーナーさんは欲が出てくる、いえ心を許してくれるのか

「ちょっとここも見て欲しいんだけど?」

「今すぐじゃないんだけど、将来ここを直したらいくら位かかる?」
「管理会社からこういう見積が出てるんだけど、これって必要な内容?」

そうした住宅リフォーム以外のビルメンテ的な相談事が増えてきました。

 

「TVケーブルを外すついでに見ておきますね」

ある時そう返事をして屋上に上がった訳です。

丁度、例のそのまま使うけど「生活感を消す」洋室に現在使っていない露出配線のTVケーブルが残っていました。これが普通の5Cケーブルの3倍はあろうかという太さで、一見するとTVケーブルには見えません。「分電盤を増設してたんじゃないか?」てっきりCVケーブルかと見間違えたくらいです。

そのケーブルは屋上に向かっていました。普段施錠されている階段の鍵を外してもらうとそう広くない屋上には、受水槽タンクに消防用水槽に「配管の錆を取る謎のでかいハコ」にエアコンの室外機が所狭しと並んでいました。錆を取る謎のでかいハコは「前の住人が勝手に契約した胡散臭いもの」と説明していたオーナーさんはボコボコに凹んだ給水配管の保温ラッキングにもため息をもらしていました。

 

「普通こんなところに乗っかったりしませんよね」
そもそも手すりが少なくメンテナンス以外に人が上ることもない屋上は管理会社が手配する業者しか上がってきません。


「うわー確かにボッコボコ。常識ある職人なら絶対に足を架けたりしないんだけどなあ」
屋上から塔屋に向かうタラップをのぼりながら頭のなかになぜ?何故?と疑問がよぎります。

タラップを登りきると目的のTVアンテナが現れます。手前のポールには例の3倍の太さのケーブルがつながっているBSアンテナがあり、奥のポールには地上波のアンテナが2台取りついています。2台のうち上のアンテナは明らかに最近の地デジアンテナと分かります。下の古いアンテナは東京タワーに向いているので現在は使っていないと推測できます。「推測?」というのもケーブルが今も残っているからです。

「もうホント、使っていない物は外しておいてほしいよね」

ブツブツ独り言を言いながらケーブルをたどり、途中で配線が切れているところまで確認しました。

 

その時です、何か違和感を感じたのは・・・
人一人がかろうじて通れる手すりの無い屋上のエレベーター機械室裏に回った時です。踏み外さないように足元ばかり見ていた私は何かに声をかけられたように感じて顔をあげます。そこにはEV機械室の換気扇フードがありました。

「ん?何だろうこの違和感は・・・」
ウェザーカバーに近づき中を覗き込んだ私は絶句しました

「蓋しまってるじゃん!」
まさかと思いながらステンレス製の底板を持ち上げると蓋は扉のようにすんなり開いて奥には換気扇のプロペラが見えます。でも手を離すと蓋はその重さでまた閉まってしまいます。

「おいおい、防火ダンパーが閉まりっぱなしじゃまずいだろ」

EV機械室の換気扇が回っても出口がふさがっているので排気が出来ません。

蓋の裏を見ると温度ヒューズとそれをつなぐアームがなくなっています。

 

管理会社が法定点検をきちんとやっいるのはエントランスのインフォメーションに貼ってある「今月の検査・点検のお知らせ」から想像できます。

 

でも屋上の防火ダンパーは閉まりっぱなし・・・う~ん、EV点検業者は換気扇さえ温度感知で運転すればOKと報告書をあげるだろうし、特定建築物定期点検を実施する設計事務所は足元の悪い屋上まで上がらないだろうからなあ・・・

そんな風に点検業者に寄り添ったところで違反状態には変わりなく、じゃあ誰がチェックするんだ!と言えばそりゃあ管理会社ですよという話になります。

このまま、修理せずに来年の猛暑を迎えたら屋上塔屋にあるエレベーター機械室内は50℃を超える地獄の環境となります。30℃に設定された温度スイッチが作動し換気扇が回っても一向に排気されず室内は熱くなるばかり。果たしてこの高熱の中で電子部品やEVのシステム管理をする基盤は正常に動くのでしょうか?

いや、動きませんよね。何らかの不具合・誤作動が生じますよね。
熱い室内でもPCや電子部品が問題なく機能するなら、あなたのオフィスのサーバールームにエアコンは必要ないですよね。

仮想通貨でマイニングする巨大なサーバーを気温の低い北欧に建設する必要ないですよね

ダンパーの修理をしなければ最悪、冒頭で妄想してもらったような「エレベーターに閉じ込められる」事故が起きます。

 

オーナーに進言すると、後日管理会社から返答のメールが来ました。

「経年劣化によりヒューズが切れ、閉鎖してしまったものと思われます・・・」
一緒に添付された見積には、「FD(ファイヤーダンパー)付きステンレス製換気扇の交換」が盛り込まれていました
え~なんで?ヒューズ交換すればいいじゃん。
何で本体まで交換すんの?そっちの方が逆に手間だし、施工も難しいし、危険作業でリスク高いし、金額も高い!

 

ちょっと待てよ、管理会社側になって考えてみよう・・・

部分的な修理だと、故障再発リスクを回避するために全てを交換するルールになっている、とか
社員のオペレーションを複雑にしないように修理は避けるようにしている、とか

売り上げUPのために、とにかく交換するんだよ!えっへっへ・・・とか
う~んどうなんだろ?オーナーに対してはどの理由にしても説明責任があるんじゃないでしょうか?
2020年の改正民法でも「きちんと資料を出して、理解・納得してもらってから工事をしなさいね」という趣旨で大改正がされている訳で、オーナー側からしたら、そういう理由でそういう提案をしているのなら「管理会社さん。それ、早く言ってよ~」という心境でしょう。

さらにメールには続きがあり

「暑くなるまでは問題ないので、夏までに対処します」
平然と書いてありましたが、そういう問題じゃないだろ~

そもそも異常を把握していなかったお宅のどの口が言うか~!

 

 

 

 

で、今回の修理ですが 「72℃で作動する(溶接部分がちぎれる)温度ヒューズ」をWEBで購入し、なくなっていたアームの代わりに「真鍮の開き留め」を切って曲げて加工して設置しました。

もちろん、FD付ウェザーカバー本来の姿ではありませんが、火災の時には蓋が閉まり延焼を防ぐという本来の目的は復旧されました。

 

まあこの状態を指して

「許されない行為だ」「手抜きだ」「責任とれるのか」と批判する方もいらっしゃるでしょう。

 

でもその前に議論すべきなのは

「定期点検しているのに何故この不具合が分からなかったの?」という事じゃないでしょうか。

エレベーター点検業者も「ウェザーカバーは自分たちの範囲外だ」と言うでしょうけれど、換気扇の運転確認をしたときにプロペラが回っているのに外の明かりが入ってこないのに疑問を持つことは出来たはずです。
特定建築物定期点検をする設計事務所に対して「屋上も点検してもらえましたか?」と管理会社が念を押すことが出来たはずです。
いずれにせよ外注業者を管理する立場の管理会社がちゃんとしないといけないと思います。
そのためにオーナーは高い管理費を払っているのですからね。

ウェザーカバーを修理して、エレベータ―が安心して使えるようになった時、管理会社を変えようかしらとつぶやくオーナーに

「多分、変えても同じことが起こると思います。オーナーがマメに報告書に目を通して、気になることは質問して、不安な事は伝えて、改善案を提案してもらう。そんな風に地道ですが管理会社を教育していかないといけませんね」

私に相談すれば対処出来ますけど、緊急事態の対応はやっぱりフットワークの良い管理会社にはかないませんからね。今後もいい関係を続けてください・・・そうアドバイスをしました。

 

 

 

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